12セント下!!
音律については、一度は勉強したぞ、というかたが多くいらっしゃることでしょう。
この図は、純正律音階、中全音律音階、ピュタゴラス音階、12平均律音階のピッチを比較したものです(深川洋一著「タンパク質の音楽」の53ページから引用しました。)
音律法(調律法)には、そのほかにウェルテンペラスメント、ヴェルクマイスター、キルンベルクなど、あります。
この記事では、純正率と12平均律との違いを意識した私の音楽経験を二つご紹介します。
この図は、純正律と12平均律との二つだけを比較するために、上の図を私が書きかえたものです。なお、この記事では、自然長音階を前提にします。
≪セント≫
ここで、単位のピッチの大きさをあらわすセントについて、一言説明を加えます。
1オクターブを1200セントとします。
半音(短2度)は100セント、全音(長2度)は200セントです。
≪純正律≫
純正律は、振動数の比率で決まります。
ド(主音)に対して、9/8の振動数を持つ音がレ(上主音)、
ド(主音)に対して、5/4の振動数を持つ音がミ(中音)、
ド(主音)に対して、4/3の振動数を持つ音がファ(下属音)、
ド(主音)に対して、3/2の振動数を持つ音がソ(属音)、
ド(主音)に対して、5/3の振動数を持つ音がラ(下中音)、
ド(主音)に対して、15/8の振動数を持つ音がシ(導音)、
ド(主音)に対して、2倍の振動数を持つ音がオクターブ上のド(主音)
です。
これをセントで表現すると、それぞれのピッチは次のとおりです。
ド から 204セント 上が レ、
レ から 182セント 上が ミ、
ミ から 112セント 上が ファ、
ファ から 204セント 上が ソ、
ソ から 182セント 上が ラ、
ラ から 204セント 上が シ、
シ から 112セント 上が ド。
ここで、面白いことに、204セントが3回、182セントが2回、112セントが2回出てきます。
204×3+182×2+112×2=1200
です。
≪12平均律≫
12平均律では、
ド から 200セント 上が レ、
レ から 200セント 上が ミ、
ミ から 100セント 上が ファ、
ファ から 200セント 上が ソ、
ソ から 200セント 上が ラ、
ラ から 200セント 上が シ、
シ から 100セント 上が ド。
です。
≪私の音楽経験1≫
私は、合唱をやります。
テナーパートを歌います。
二年ほど前、2014年9月ですが、ブラスバンド170名と合唱団200名とで、
シベリウスのフィンランディアを演奏したことがあります。
合唱団だけで何度か、練習をして歌いこんだあと、はじめてブラスバンドとあわせる日のことでした。
指揮者が導音(シ)のピッチを厳しくチェックして、合唱団の音の高さを調整したのです。
フィンランディアでは、導音が多用されていて、導音の果たす役割が大きいようです。
ブラスバンドの音作りは、純正律でなされているものと思われます。
それに対して、合唱団は、ピアノで音取りをしてきているので、12平均律です。
主音と導音とのピッチは、12平均律では、100セントですが、純正律では、112セントです。
指揮者は、「12セント下!!」とまではいいませんでしたが、しっくりとくるまで、何度も合唱団の音の高さをチェックしました。それができてからやっと本格的な練習の始まりでした。
≪私の音楽経験2≫
Ⅰの和音(ドミソ)の中音のピッチが気になるときがあります。
合唱をしていて、ドミソを長く伸ばすときであって、
ミの音をテナーが担当する場合です。
このとき、12平均律でミを出したのでは、どうもハモラないのです。
ミは、純正律でいえば、ドから386セント上のピッチです。
12平均律だと、400セントです。
したがって、しっかりとハモル音を出そうとすると、14セント下を狙う必要があります。
テナーリーダとしての私は、中音で長い音を出す際には、特に、14セント下を心がけます。
このことは、ピアノを弾く人からも聞いたことがあります。ドミソの和音を引くときには、ミを少し弱く弾くそうです。うなりを目立たなくするためのようです。
合唱でも、そのような指導、つまり、少し、控えめの音だしをするようにという指導者もいらっしゃるようです。それは、消極的な指導だと思います。
伴奏のピアノがある場合なら、仕方ないかもしれませんが、アカペラの場合には、ピッチの調整を意識したいものだと思います。
中音、下中音は、音階の性格を決めるといわれる場合があります。ひょっとしたら、純正律と12平均律との間の差が大きい音であることに起因するといえるかもしれません。
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